村井弦斎の、記念すべき小説第一作。『明治文庫』第十五編に再録されたものがPCから読めます(要ログイン)。
実は私は、冒頭の戦争否定論めいた論文だけは鮮烈に覚えているものの、その後の才子佳人の危難部分は適当に読み飛ばしていたのでした。次作『水の月』にとりかかる前に、じっくり読んでおこうと思います。
しかし、やはり圧倒的に面白いのは冒頭の、主人公が書いた論文。
「地球以外の観察者」がここ百年の地球の変わりっぷりを見たらどう思うかなんて、SF的な発想がこの頃(一八八八(明治二一)年)から出てきてます。今後の人類は地球表面の「上」を往来出没すべきとも。単なる西洋文明礼賛には終わっていません。弦斎のデビュー作の名に恥じません。