村井弦斎の『酒道楽』(一九〇二)は、アルコール依存症からの脱却を描いた禁酒小説ではありますが、裏の物語として顕響器(音を大きくする機械)や蓄音器(音を再生する機械)の発明・改良が主題になっておりまして。
そんな同作品の花見酒の場面。酔態を演じる老若男女を描写した後。
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もしも一大活動写真を桜樹の下に備え置きこの不規律なる花見風俗を写して百年の後に伝えなば後の世の人今の世をいかに野蛮の時代とやいわん。
『酒道楽』岩波文庫 二五五ページ
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活動写真なんてあったかな、と調べたら、一八九七年に日本でも上映されてたそうです。
音と映像の技術はこの百年で長足の進歩を遂げましたが、禁酒の技術というやつはそれほど劇的には進歩していないようです。
追記 一九〇三は一九〇二の誤りでした。訂正してお詫びします。