『酒道楽』再読完了。確かに面白かったけど、これで論文は(少なくとも今は)書けないという結論に達しました。
その理由をだらだら書いてみます。
弦斎のほとんどの作品は、「発明が人を不幸から救う」という主張で貫かれてまして、『酒道楽』も例外ではないのですが。
問題は、発明(音響機器)と不幸(アルコール依存症)がかみあってないことでして。おかげで最後の一章直前までダメダメだった二人が、最終章でいきなり禁酒と事業に成功して万歳万歳という、唐突な終わり方になっています。依存症から回復するプロセスが描かれていないのです。
前作『釣道楽』では、主人公の専門(生物学)と問題(実家か養家か)がきれいにリンクしていて、主人公が動物と人間の違いを心から理解することで、実家ではなく養家に戻るという結論が納得いくものになっています。それに比べると、『酒道楽』はどうしても劣るようです。ダメな作品とはいいませんが、論文にはしづらいのです。
といって『釣道楽』はすでに博士論文の第五章で書いてしまったので、もう一回投稿する気にはなれません。……次は『女道楽』行ってみます。今度は文庫本ではなくデジタルコレクションなので、再読に時間がかかりそうです。