核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

手に入らない水の月。実現不可能な平和という理想?

 村井弦斎の第一作(確認されている限りでの)、『加利保留尼亜』は、人類どうしでの戦争をやめ、人類をおびやかす天然力と戦うべきだという、崇高な理想を掲げていました。

 しかし第三作『匿名投書』(これも確認の限りでの第三作)では、ロシア・清国の日本への侵略戦争という未来像を描き、侵略してくる敵兵は殺すしかない、さらには敵国への侵略も辞さないという、「現実主義」的な主張へと転じてしまいました。

 そして今回発見した、第二作「水の月」。作品を読む前は、水にうつった月が手ですくうと消えてしまうように、世界平和という理想の実現困難を描いた作品じゃないかと、あたりをつけていました。

 私の予想に反し、第二作『水の月』は直接に戦争や平和を扱った作品ではありませんでした。しかし、「これだけ文明が進歩したのに、なぜ人間どうしは仲良くできないのか」という問題をつきつめた小説であり、『加利保留尼亜』と『匿名投書』をつなぐミッシングリンクではあると判断しました。

 豊平川の空中を飛行する女と、札幌に富士山やエーフェル塔を出現させる男。

 何でもありな二人なのですが、仲良く相思相愛という展開にだけはならないのです。