実業之日本社の創始者による、村井弦斎への追悼文です。
ほぼ同じ時期に芥川龍之介の自殺事件がありまして、そちら関係の追悼文に比べればはるかに小さい扱いですが、晩年の弦斎のひととなりを知る貴重な資料です。
※
(弦斎が『婦人世界』に)小説『子宝』を毎号執筆さるゝに及んで、好評は更に好評を生み、我雑誌界空前の大部数を発行するに至つた。越えて又小説『小松島』を書かれたが、心血を潅いで書かれただけあつて、人気を沸騰せしめた。
※
そのわりには『子宝』も『小松島』も単行本化されていません。後者は結末部の軍備廃絶論がまずかったのでしょうか。この追悼文でも健康法研究家としての弦斎にはくわしく語られていますが、文明批評家としての弦斎は語られていません。最大の理解者である増田義一にしてさえ、軍備廃絶論は受け入れられなかったようです。