平和主義者必読の問題作です。
インドの古典『マハーバーラタ』に語られる、五王子と百王子の戦争の一場面。
五王子の一人アルジュナは敵味方の軍勢を眺め、両軍いずれもにも親戚知人がいるのを見て(五王子と百王子はいとこ同士なのです)、かたわらのクリシュナに言いました。
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わしは勝利を望まない、クリシュナ! 王権もまた幸福も。
王権が我々にとって何になろう。 享受や生命が何の役に立とう。
その人々のために王権を、 享受、幸福を我々がのぞむ
当の彼らは生命をも財をも 投げ捨てて戦闘に従事している。
(二行略。「彼ら」即ち師や父や他の親類たちが)
彼らが〔わしを〕殺すとも、クリシュナ! 彼らをわしは殺したくない。
「バガヴァッド・ギーター」『ヴェーダ アヴェスター』(筑摩書房 1967)
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と、どたん場になって戦闘を拒否します。臆病風に吹かれたのでないことは、引用文の最後の一行からも明らかです。殺されることへの恐怖ではなく、殺すことへの畏れからの非戦論です。
これに対するクリシュナの答えが、「バガヴァッド・ギーター」の大半を占めているわけですが…。