核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

「バガヴァッド・ギーター」 その1

 平和主義者必読の問題作です。
インドの古典『マハーバーラタ』に語られる、五王子と百王子の戦争の一場面。
 五王子の一人アルジュナは敵味方の軍勢を眺め、両軍いずれもにも親戚知人がいるのを見て(五王子と百王子はいとこ同士なのです)、かたわらのクリシュナに言いました。

   ※
 わしは勝利を望まない、クリシュナ! 王権もまた幸福も。
 王権が我々にとって何になろう。 享受や生命が何の役に立とう。
 その人々のために王権を、 享受、幸福を我々がのぞむ
 当の彼らは生命をも財をも 投げ捨てて戦闘に従事している。
 (二行略。「彼ら」即ち師や父や他の親類たちが)
 彼らが〔わしを〕殺すとも、クリシュナ! 彼らをわしは殺したくない。
  「バガヴァッド・ギーター」『ヴェーダ アヴェスター』(筑摩書房 1967)
   ※

 と、どたん場になって戦闘を拒否します。臆病風に吹かれたのでないことは、引用文の最後の一行からも明らかです。殺されることへの恐怖ではなく、殺すことへの畏れからの非戦論です。
 これに対するクリシュナの答えが、「バガヴァッド・ギーター」の大半を占めているわけですが…。