核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

アルジュナの葛藤

 山際素男編訳『マハーバーラタ』第三巻(三一書房 1993)より。畏敬するビーシュマとの対決を避けられなくなったアルジュナの葛藤場面。

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 「あの立派な老人とどうやって戦えようか、クリシュナ。小さな頃、泥だらけの体で祖父さまの膝によじのぼり、衣服を汚し、膝にのっかって”父さま””父さま”とじゃれついた。”わしは父ではないぞ。お前の父の父じゃ”その度に祖父さまはにこにこしていったものだ。その祖父さまをこの手で殺さなくてはならないなんて、あんまりだ。
 祖父さまにみんな殺されてしまえばいいのだ。俺はもう戦いたくない。そのために勝とうが負けようがどうでもいいんだ。クリシュナよ、あんたはどう思う?」
 (386~387ページ)
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 「バガヴァッド・ギーター」の対話の時と同じように、結局アルジュナはクリシュナに説得されてしまいます(戦争はクシャトリアの努めだとか、ビーシュマは死ぬ運命にあるとか)。しかし、この英雄伝らしからぬ未練がましさこそ、マハーバーラタの魅力だと思います。なお、アルジュナとビーシュマの正確な血縁は祖父ではなく大伯父だそうです。ややこしい神話的な事情のある一族でして。