核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

村井弦斎『日の出島』「朝日の巻」 その12(最終回)雲岳女史の意気虹の如し

 「朝日の巻」の下巻になって登場した藤原大公爵と孫の玉姫。この二人が人道同盟会の支援についたことにより、登場人物間の勢力図は一気に塗り替えられました。
 悪事を尽くしてきた犬山と琴次の兄妹もついに悔悟し、雲岳女史らと共に太陽船で大陸に渡ることになります。
 最後まで回心せず、琴次との無理心中を企てて逮捕された牛沼も、幸福先生が引き取って善導することになり、ここに人道と獣道の戦いは一応の決着を見たのでした。

   ※
 太陽船は愈(いよい)よ支那へ向つて出発しぬ、雲岳女史の意気旧に依て虹の如し。

  朝日の巻下巻 終
 (近代デジタルライブラリー『日の出島 朝日の巻 上下巻』 162/168)
   ※

 …明治最長の大長編の掉尾としては、なんか物足りない印象です。巻頭の「弦斎居士著述目録」にはこの「朝日の巻 上下巻」の後に、「敷島の巻」が予告されており、そこで伏線の数々(お富嬢の婿選びとか、対露問題とか)が回収されるはずだったのかもしれませんが、それが書かれることはついにありませんでした。