悪人でさえ、「覚悟」がなければ成功できないというあたりが弦斎らしいというか。
初期の「蓬莱の巻」の頃から登場していた、不良書生コンビの犬山と牛沼。
中盤からは犬山の妹の芸者琴次も加えて悪人トリオとなり、太陽燈反対運動の手先になったり、琴次に雲野博士を誘惑させたりと、さまざまに主人公らの行く手に立ちふさがってきたのですが、ついに二万円の大仕事に着手します。初任給が十円とかの時代。
沈没金貨を引き上げると称して出資者を現金ごと作業船に乗せ、その船をわざと沈没させて出資金をただ取りしようという悪だくみ。ろくでもない話ですが、金主の命を助けること、犠牲者を出さないことを前提にしているあたりがまだしもです。
…といった話を、汽車の中で耳にした幸福先生。ようやく人道と獣道に決着の時が。