核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

村井弦斎『日の出島』「朝日の巻」 その11 「釣工合」

 詐欺師犬山が語る釣り理論。

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 「魚を釣るのだつて中々呼吸が六(むづ)か敷(し)い、早く釣上げると魚が鈎(はり)にかヽらず、長く釣上げずに打捨てて置くと餌だけ只取られる、况(ま)して人間を釣るのは急ならず緩ならず程の好い釣方で無くつては不可(いか)ん」
 (近代デジタルライブラリー『日の出島 朝日の巻 上下巻』 63/168)
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 この『朝日の巻』とともに大長編『日の出島』はいちおう連載終了し、村井弦斎は新たなシリーズ『百道楽』の第一作、『釣道楽』にとりかかるわけですが、そろそろ釣りの話がしたくなってきたのでしょうか。
 どうやら岩波文庫で復刻はありそうもない『釣道楽』ですが、『食道楽』ほど専門分野に特化した話ではありません。どちらかというと上記引用文にあるような、人間を釣る方法についての小説です。