連載中(1900(明治33)年)に義和団の乱(清国の反帝国主義活動)が起きたこともあり、この巻からは「軍国主義的色彩が強い」なんてなまやさしいレベルではなくなってきます。語り手も登場人物たちも、義和団を「頑固なる攘夷党」と断じ、文明諸国の連合軍による鎮圧を要請するようになります。
一方、以前からのほのぼの発明物の要素も残ってはいます。清国への出兵を控え、お富嬢への未練に悩む馨少年が、幸福先生なる人物に嫁いだお糸夫人に慰められる場面。
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「妾(わたくし)の考へには馨さんが落差の多い水力でお富さんが発電機即ちダイナモーの様なものだと思ひます。発電機は蒸気力でも働くし石油エンヂンでも瓦斯(がす)エンヂンでも動きますが、水力で動かすのが一番宜いのでせう、ところで水力の方はそれを発電機に使はなければ何んの役にも立ちません、それと同じ事で馨さんは是非お富さんを獲なければ何千馬力何万馬力と云ふ大原動力を世の中に供給する事は出来ますまい」
(近代デジタルライブラリー『日の出島 曙の巻 上下巻』 33/197)
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リスクのない発電手段など(現在のところは)存在しないのですが、明治文学における電源問題の一例として、ここに引用しておきます。一応、弦斎が「発電機より一層進歩した水力利用器械が出来たら」と書いてもいることをつけくわえて。