核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

星一『三十年後』 その3 レーニン観

 星新一のお父上の手になる、大正三十七年の未来像を描いた空想小説。
 タイトルの通り、実際に書かれたのは大正七(1918)年、つまりロシア革命の翌年なのですが、その失敗を見越した箇所がありました。

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 (三十年前の大正初年には)
 人間の堕落は其極端にまで達して了つたのだ。現に露国の如きがそれで。過激党のレーニン一派が政府を乗取つた結果はどうで有つたか。混乱に混乱、秩序を全然失つて、原始時代の野蛮さ加減にも劣らぬ浅猿(あさま)しい状態に陥つて了つて実に見るに忍びなかつたでは無いか。
  (近代デジタルライブラリー 星一『三十年後』 33/138)
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 同じころ、矢野龍渓が革命期ソ連の凄惨な実情を訴えていたことは以前に紹介しましたが(http://blogs.yahoo.co.jp/fktouc18411906/archive/2011/12/09)、星一も見るところは同じだったようです。
 ロシア革命に限らず、人類の歴史は愚行と悲惨に満ちています。しかしそれを事前に予見し、防ごうとした文学作品もわずかながら(本当にわずかに)存在する。今の私にとっての唯一の希望です。