核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

思想の科学研究会編 『共同研究 転向』全3巻 下巻 平凡社 1962

 (追記 書名が不正確だったので訂正しました。お詫びします。2012・12・30)
 東洋文庫から少しずつ復刊されているのは気づいていましたが、完結してからまとめて読もうと思い、つい後回しにしていました。
 まだ復刊していない下巻に小林秀雄の略伝があると教えていただき、図書館で1962(昭和37)年刊の本を借りてきた次第です。神保町のオタどん様に感謝。以下がその全文です。
 
   ※
  小林秀雄(一九〇二ー)
 
 中日戦争下に自由主義から翼賛会型超国家主義に転向。昭和初期の多くの非政治型文学青年が、文学における自由主義を保ちつつ政治においては中日戦争・大東亜戦争にさいしての日本国家の立場を無条件でうけいれるという傾向の先達となった。この三巻の中で論じつくされていない重要な例の一つ。
 (467~468ページ)
   ※
 
 本人存命中に、すでに彼を「翼賛会型超国家主義」と断言する文献があったのは、正直なところ意外でした。ただ、その裏付けとなる資料はまったく提示されていません。「この三巻の中で論じつくされていない」どころか、まったく論じられていないというべきです。
 戦後に出た全集や文庫でしか小林秀雄を知らない方々は、「そんなに国家主義でもないんじゃないか」と思われるかもしれません。
 実はその戦後の小林秀雄全集が問題でして、戦前・戦時下の時局迎合的な発言(ヒットラー礼賛や特別攻撃隊賛美)を逆の意味に書き換えたり、文章や対談そのものをなかったことにしたりといった作業が大量に行われているのです。そうした例のいくつかは、当ブログの添付画像で御覧いただけますが、それでも信用できないという方は、図書館で戦時中の『朝日新聞』や雑誌『文学界』を直接お読みいただくことをおすすめします。
 以上は昨年の7月から述べてきたことですが、このたびコメント欄でご質問をいただきましたので、あらためて論じておきました。