核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

『平妖伝』(予告)

 念のため「平妖伝 デスノート」で検索してみましたが、こちらはそれらしき情報はヒットしませんでした。
 佐藤春夫も翻訳している中国古典の傑作なのですが、本が手元にないため、覚えている範囲であらすじを紹介します。
 
 呉越の戦いの時代。白猿神というサルの妖怪が、天界から七十二の変化の術を盗み出します。予想以上に危険な術だったので、サルは洞窟の壁に彫りつけたものの使うことなく放置し、年月が流れます。
 そして宋の時代。タマゴから生まれた和尚が秘術の存在を知り、サルの留守中に霧のバリアを突破して呪文を写し取ります。古代文字が解読できなかったので、キツネの一族に協力を求めるのですが、彼らは勝手に解読した術(ひょうたんから火炎放射とか、椅子をトラに変えるとか)を町のそば屋やだんご屋に教え、次々に仲間を増やしてしまうのでした。彼ら「妖人」たちの存在は宋王朝に知られ、ついに討伐軍が派遣されることに・・・。
 あからさまに『水滸伝』と『西遊記』の影響を受けているほか、『三国志』からも二人ほどゲスト出演(関羽とデイコウ)していますが、スケールははるかに小さい作品です(おそらく意図的に)。こじんまりと日常すれすれの世界で展開する妖怪譚です。ホフマンの『黄金の壷』的というか。『ジョジョの奇妙な冒険』でいえば第四部(杜王町)あたりの雰囲気でしょうか。あれでモッツァレラチーズ好きになりました。
 
 2023・12・29追記 なお、サルの上司である九天玄女さまの武器は「2個の弾丸」です。ちょっと第七部(スティールボールラン)っぽい?
 
 で、デスノート。討伐軍に追い詰められたキツネの長老が、至悪の術ゆえに封印していた「烏竜斬将の法」を最後に使おうとするわけです。
 名前を書いた紙を焼きつつ、いけにえの犬を斬ると、その名前の主も死ぬ。もし軍隊名簿を焼けば、一国をまるごと滅ぼすこともできる術です。なぜ最初から使わなかったという気もしますが、この作品の妖人たちは基本的に小心なんですよ。善人とはいえませんけど。