「奇想といっても、単なるデタラメな思いつきではない。彼らが奇想のなかで展開したのは、荒唐無稽は荒唐無稽なりに、抱腹絶倒は抱腹絶倒なりに、そして悪夢は悪夢なりに、深い理由のある奇想なのである」(9ページ まえがき)。というわけで、地球平面説の佐田介石から、横光利一「紋章」のモデルとなった発明家の長山正太郎までをたどった裏科学史です。
たしか博士論文のまとめ中に買ったもので、当時のお目当ては以下のあたりでした。
第四章 人権を乗せた軍艦―矢野龍渓
今では「第六章 森鷗外が畏れたメスメリスト―渋江保」を熟読しています。森鷗外『澁江抽斎』に出てくる、澁江(渋江)抽斎の孫の保(たもつ)さんといえば、ぴんとくる方も多いのではないでしょうか。この人は百を超える著書を出してまして、その中には催眠術や千里眼に関するもの、SF的なものも含まれているそうです(いずれも未読。近代デジタルライブラリーで探せばあるはずです)。
博文館という大出版社にいいように使われて、俗書を量産してるだけじゃないか。鷗外はそんなふうに書いていますが、評価は実際に読んでから下そうと思います。