核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

いきはりの研究―江見水蔭の場合

 江見水蔭を読みだしたのは、『三十年後』の内容に彼がどの程度関わっているかを知りたかったからでした。そして見つかったのが、1911年の帰省小説「備前岡山」の一節。

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 「戟(ほこ)取りて国に尽すの人よ。其数十万か。筆を提(ひつさ)げて国威を輝かす者、此所に来る唯一人也といふ気が、生ぜずにはゐられなかつた。斯うした意気張り(いきはり)を出すに連れて、自分の気の弱さが能く知れて来た」
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 文士を軍人と対比させているのも興味深いのですが、問題は「意気張り」の語です。
 『三十年後』ではカタカナで、「衝突争闘を生じるのは、皆下らないイキハリから始まつた」ものだ、という文がありました。
 もしかすると、『三十年後』の作品内容は、私が考えていた以上に星一よりも江見水蔭の比率が高いのかもしれません。どうやら、明治末から大正7年前後の水蔭作品をさらに読み込む必要がありそうです。空中飛行器がらみの科学小説は特に。