核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

小林秀雄 「常識」 『文藝春秋』 1959(昭和34)年6月 その1

 予定を変更して、小林秀雄「常識」の初出を紹介します。全集や文春文庫版と読み比べると、けっこう看過しがたい異同があったもので。
 「考えるヒント」という副題は編集者がつけたそうですし(「役者」より)、「名人の読み」「不思議な傾向」という小見出しもたぶんそうなのでしょう。
 初出での「学生時代」「エドガー・ポー」といった表記が、第五次全集では「學生時代」「エドガア・ポオ」といった旧字表記になっていますが、これは著者の意図なのでしょう。なぜか「メールツェルの将棋差し」だけは全集でも長音記号表記になっています。1930年に『新青年』に掲載された時は「メエルゼルの将棋差し」という題でした。
 あとは「ポーの推論の前提は、」が「ポオの推論は、」といった細かい異同が多数ありますが、少なくともこの228~229ページに関しては、文意が決定的に変わるような箇所はありませんでした。
 問題は、残りの230~231ページについてです。
 なお、もう一つ問題なのは、第五次小林秀雄全集の『補巻Ⅲ 註解 追補 下』(新潮社 2010(平成22)年)180~181ページにある「常識」の註解です。それらの異同に何一つふれていません。
 紙幅の都合ではないことは、以下のごとき註解ぶりを見てもわかります。
 
    ※
 8 電子頭脳 電子計算機、コンピューターのこと。最初の電子計算機は一九四六年、アメリカのモークリーとエッカートが完成した。(略)
 17 エレクトロニクス electronics(英) 電子工学。
    ※
 
 繰り返しますが2010年に出た補巻です。小林秀雄全集は、コンピューターやエレクトロニクスの意味を知らない読者層を想定してるんでしょうか。
 
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