核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

遅塚麗水のことなど

 CiNii(学術論文サイト)で検索しても、私のも含めて5本しか論文のないマイナー作家、遅塚麗水。
 その筋では、かろうじて紀行文(旅行記)の作家としてのみ名前が残っているようです。
 正直なところ、紀行文なんてのは2012年の読者が読んでもたいしておもしろいものではないし(テレビどころかカラー写真もなかった明治期には存在価値があったのでしょうけど)、もと同僚の村井弦斎もあまり高く評価してはいなかったようです(『日の出島』収録の「文学魔界」によれば)。
 なんですけど、先ごろ入手した短編「初鮭」に関して言えば、けっこういける印象を受けました。
 「電話機」もそうだったんですけど、西洋文明の最先端の知識を武器に、一人男性社会に立ち向かうヒロインの物語、なんですよ。麗水が女権論者だったという話は聞かないし、実際女権論者ではなかったんでしょうけど、彼は女性を、独立した主体として認めている印象を受けます。『金色夜叉』や『不如帰』の時代の小説としては、かなり例外的なのではないでしょうか。
 1903年前後における女性の地位とかメガネについてもう少し調べた後、あらためて報告させていただきます。