核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

大久保昭男訳 『ヒトラー=ムッソリーニ秘密往復書簡』 草思社 1996

 先に伝記のほうを紹介すべきだったかもしれませんが、上下二巻の分厚い『ムッソリーニ』を読んでも、日本との同盟のことなど1ページあるかないかなんですよ。で、ひとまず1940(昭和15)年8月27日、つまり日独伊三国同盟1ヶ月前の、ムッソリーニからヒトラー(本書ではこの表記)あて書簡を紹介します。
 列国の動向分析の一番最後に、ムッソリーニはこう書いています。
 
   ※
 日本―それとわかるあらたな動きの兆しはまだありません。日本の政策は謎めいており、優柔不断であります。日本とソ連邦との間の緊張をやわらげ、ソ連邦アメリカとの摩擦を強めるために、可能なあらゆる手を打つ必要があります。
 イタリア陸・海軍の兵士たちは、ほどなくドイツの友軍と伍して戦うことになるのを誇りに感じています。
 フューラー、同志としての挨拶をお受けください。
                                 ムッソリーニ
 (大久保昭男訳 『ヒトラームッソリーニ秘密往復書簡』 草思社 1996 74ページ)
   ※
 
 ムッソリーニ側にとって日本とは、「ソ連邦アメリカとの摩擦を強める」ための「手」にすぎなかったようです。少なくとも日本の友軍と伍して戦うのを誇りに感じていなかったのは確かです。夷をもって夷を制す、といったところでしょうか。