核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

山片蟠桃 『夢の代』

 源了圓編集『日本の名著 23 山片蟠桃 海保青陵』中央公論社 1971(昭和46)年(原著は1820(文政3)年)。『夢の代(抄)214~215ページ。
 山片蟠桃(1748~1821)は江戸時代における無鬼論(無神論)の先駆者として知られています。鬼神がないという説は道徳の基盤を破壊するものだという批判もあったわけですが、彼はこう反論しています。

   ※
 ただ神もなく、仏もなく、祠も寺もなかったら、上下とも、その年長者を年長者とし、その親を親としてうやまい、天下は平和になり、民は恥ずべきことを恥を感ずるようになり、かつ相互の誠意が感通するようになるであろう。今のように、人々の心が混乱して帰すべきところがないと、民は自己の罪をまぬかれて恥じることがないところにいってしまうのである(このように神仏がない、鬼神がないとすることが、天下に秩序をもたらし、人を道徳的存在にするのである)。
   ※

 罰への恐怖や、ご利益への期待ではなく、内面的な良心による道徳。デモクリトスの快活哲学や、ラッセルのキリスト教批判に通じるものがあります。「天下は平和になり」の一節が原文でどうなのか気になるところです。