核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

決闘による戦争回避の提案その2―映画『西部戦線異状なし』

 私はこの映画を観ていないので、松元雅和氏の『平和主義とは何か』(中公新書 2013)から孫引きさせていただきます。第一次大戦中のドイツ軍兵士のセリフです。
 
   ※
 「こうすりゃいい。大戦争が起こったら野っ原に囲いを作って、そこに王様を全部集合させて、閣僚と将軍も集めて、パンツ一枚で棍棒の殴り合いをさせる。勝負が早い」
 (92ページ)
   ※
 
 それは道徳的ではない、というのであれば、戦争に賛成したわけでもなく、戦争で利益を得るわけでもない国民を集めてきて、機関銃を撃ち合わせる行為はもっと道徳的ではないのです。
 よく、「罪もない女子供」という表現が使われますが、では成人男子の兵士は「罪がある」といえるのか。『平和主義とは何か』の第二章では、「兵士は戦争責任者か」(60~63ページ)という一項を立てて論じ、以下の結論を出しています。
 
   ※
 いかなる美辞麗句で取り繕うとも、戦争に賛成するということは、自分に対して―あるいは、よりありそうなことだが、自分以外(「以外」に傍点)の他人に対して―殺人を許容し、推奨し、要求しさえするということである。私たちは、戦争をありうる外交・防衛手段の一カードとして取り扱う前に、まずはそれが名前を変えた殺人であることを認識しなければならない。
 (68ページ)
   ※
 
 実は私も博士論文の一章、「村井弦斎『匿名投書』論―自衛のための戦争は許されるか」で同じ問題を扱ったのですが、松元氏ほど明確な結論は出せませんでした。ネットでの公開はまだのようです。