明治10~20年代にかけて多く書かれた「政治小説」というジャンルの一作品。村井弦斎の「軟骨議員」を紹介します。
主人公は青柳柳之助という国会議員。悪人ではないものの名前通りに気が弱く、アイスクリームの襲来におびえています(食品ではなく、氷菓子→こおりがし→高利貸しのこと)。
政界の大物、為成卿の意に背いて民党(反政府側)になったばかりに、家族の着物も買えない貧乏生活で、世話になった養父母からの小言に苦しむ日々。為成の意を受けた議員、日和見順慶にダイヤモンドの指輪を見せびらかされ、ついに吏党(政府側)に変節してしまいます。
為成はさらに壮士の暴力や架空の請負工事など、硬軟とりまぜた手段でもう二人の議員を取り込みます。
これで三百議員の過半数が吏党に…と思った矢先に政権交代が起り、新内閣はことごとく民党の手に。
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四人の代議士は一介の獲る所無くして唯変節の醜名を世にのこせしのみ、アハレ小子、
軟骨議員 完
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とってつけたような結末で、政治小説としても弦斎作品としても凡作だとは思うのですが、妙に気になる作品ではあります。これが『金色夜叉』や隈板内閣に先行していることとか…。