核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

足立力也 『丸腰国家~軍隊を放棄したコスタリカ 60年の平和戦略~』扶桑社新書047 2009

 とりあえずロケット砲はない。安心しました。
 1948年に軍隊廃止を宣言した、中米のコスタリカ。決して平穏な地ではなく、アメリカにとって太平洋と大西洋を結ぶパナマ運河コスタリカのすぐ南)近辺は支配下におきたい所でした。19世紀にはニカラグア運河(コスタリカのすぐ北)の計画もあったことは、村井弦斎政治小説『軟骨議員』でも読んだ記憶があります。
 で、1856~57年(幕末ですね)にウォーカーなるアメリカ人がコスタリカ侵略を図って撃退される事件もあったわけです。1821年のスペインからの独立以来、コスタリカは多難でした。1930年代にはドイツ寄りのコルテス政権がユダヤ人を迫害したり、1941年にはアメリカ寄りに転じたカルデロン大統領がいち早く日本に宣戦を布告したり。そして、そのカルデロン政権を打倒した、ウラテとフィゲーレスの革命政権が、1948年12月1日に軍隊廃止を宣言し、1949年11月7日に発布された新憲法の第12条に「恒久的組織としての軍隊は禁止される」と記されるに至ったわけです。
 第三章「コスタリカには本当に軍隊がないのか?」では、コスタリカ国境警備隊や警察の現状がくわしく報告されています。1955年のニカラグアからの侵攻では(亡命したカルデロン元大統領によるそうです)、少なくとも9名の犠牲者が出たこと。その後は1983年のモンヘ大統領による積極的永世非武装中立宣言などによって、極力小さな軍事力で大きな外交成果を上げる姿勢をとってきたこと(国境のロケット砲も撤去したそうです)。
 コスタリカの国是もさることながら、筆者足立氏のしっかりした平和論にも敬服させられます。

   ※
 よく、「コスタリカは軍隊を廃止した」あるいは「コスタリカで軍隊が廃止された」といわれるが、「国」などという人格を持たない「システム」が軍隊を廃止したのではなく、軍隊が受動的に「廃止されたのでもない。具体的な人物が能動的に軍隊廃止を決定し、実行したのだ。当たり前のことではあるのだが、私たちは、システムの話になるとしばしば人という要素を忘れがちになってしまう。
 「第一章 コスタリカはどうやって軍隊をなくしたのか?」37~38ページ

 最もわかりやすい両者の違いは、人を殺さねばならないか、殺してはならないかだ。
 軍隊は、必要に応じて相手を殺さねばならない。しかし警察は、いかなる相手も殺してはならない。
 「第三章 コスタリカには本当に軍隊がないのか?」93ページ
   ※

 少なくともたてまえとしては、警察は「いかなる相手も殺してはならない」組織であるべきだと私は思います。だから軍事力による「世界の警察」的な発想には一貫して反対です。
 問題は、コスタリカの積極的永世非武装中立主義も、アメリカの軍事力の背景に少なからず拠っているという点でして。真の絶対平和のために、コスタリカを継続的に調べてみることにするつもりです。