核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

ミッシェル・メイソン 大原関一浩訳「男色と国家ー原抱一庵の『闇中政治家』ー」(ジェンダー史学 5 (0), 7-20, 2009)

 『闇中政治家』という小説、ジェンダー論とかセクシュアリティ論でもうひと論文書けるんじゃないかな、と思ったらすでにありました。

 おなじみイヴ・セジウィックホモソーシャル論などに依拠しつつ、『闇中政治家』という政治小説が反政府活動(福島事件)と同性愛というふたつのタブーに抵触しつつも、結末でそれをうやむやにしてしまい、同作品は「国家に対して批判的だったかも知れないが、国家の記号表現を男性化する運動には貢献したと言える」と結論なさっています。

 浅野論文をはじめ、日本語論文の重要な先行研究にふれていないのは気になるところですが。『闇中政治家』が明治政府への批判を完遂できなかった作品であるという論旨であるなら、私はそれに同意します。

 メイソン氏に『闇中政治家』を紹介したのは小森陽一氏だとのこと。この調子で、明治前期の知られざる小説の研究が、ばしばしと海外にも広まってほしいものです。