核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

小林道彦『山県有朋 明治国家と権力』(中公新書 読む予定)

 気になる本が出てきました。利益線論の提唱者、山県有朋(やまがた ありとも)の評伝です。

 

 2024・2・2追記 読みました。詳細は本日の記事にて。

 小林道彦『山県有朋 明治国家と権力』(中公新書 二〇二三) - 核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ (hatenablog.com)

 

 利益線論とは何かというと、主権線(国境)の外側に、自国の安全を確保するための縄張りとなる「利益線」を設けるべきだという主張です。山県有朋は総理大臣・伯爵だった一八九〇(明治二三)年に、日本にとっての利益線は朝鮮だと断言しています。

 先ほどYahooニュースの書評で見た、山内昌之氏の書評にはこうありました。

 

 「山県はそれ(引用者注 利益線のこと)を朝鮮半島の中立化として構想した。それは必ずしも、侵略や征服を含蓄するものではない」

 (出典は週刊ポスト2024年1月1・5日号とのこと)

 

 が、歴史学の権威のお言葉とはいえ、とうてい受け入れられません。

 日清戦争日露戦争は、山県の利益線論にそって、朝鮮や満州を戦場として行われました。国境の外側に軍隊を出して戦争をするのが侵略・征服でなかったら何でしょうか。

 近代日本の歴史を侵略戦争の連続にし、ついに膨れすぎたバブルがはじけるように滅ぼしたのは、山県の利益線論という、倫理的にも政治的にも戦略的にもまちがった政策による、と私は見ます。

 当時の文学者たちの動向を見ますと、利益線演説の一八九〇年、森鴎外は小説『舞姫』でそんな山県を「天方伯(あまかたはく)」という美称でたたえ、福地桜痴は小説『仙居の夢』で「闇雲伯(やみくもはく)」という蔑称でおとしめました。両者の山県への賛否を示しています。

 そして村井弦斎は、同じ年に、「匿名投書」という小説を連載しました。ロシアの脅威を過大に訴える投書が波紋を呼び、ついにロシア・清国(しんこく。当時の中国)連合軍の日本本土侵略を招いてしまう、という仮想戦記です。

 私(菅原健史)はこの作品を、弦斎の、山県の利益線論への批判として読む学会発表・論文を手がけ、今でもその評価は変わっていません。

 そんなわけで私にとっては、山県有朋は日本の侵略戦争路線を決定づけた超A級戦犯なのですが、小林道彦氏はそんな山県をどう評価しているか。気になる本です。