核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

もし誰かが利益線論に反論していたら

 山県(山縣 やまがた)有朋首相の利益線演説(一八九〇)は、朝鮮侵略を国是とすることを正当化する、予告状みたいなものなわけですが、それに対して天皇や議会や新聞や各党や国民が反論したとか、議論を行った形跡すら認められないのは、まことに残念なことです。この時点では軍部の中にさえ専守防衛論があったことを思えば、山県の個人的意見にすぎない利益線論をつぶせる機会、侵略主義でない日本に進める機会はあったと思うのです。中江兆民も、アルコール中毒で歩行困難なんて言ってる場合じゃなかったでしょうに(お前が言うな?)。

 村井弦斎の小説「匿名投書」(一八九〇)は、シベリア鉄道完成後の東アジア情勢を緊迫感ある筆致で描いていますが、利益線論への反論とみなすのは無理があるようです。