前々々回にこれで最後と書いてしまいましたが、まだ体あたり詩が残っていました。
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待ちに待つたる初陣(うひぢん)の
ハワイ奇襲だ、爆撃だ。
風に衝き行く何万里、
うなれプロペラ、どこまでも。
母のをしへに身も魂(たま)も
君にささげた上からは、
我が機一つに艦(ふね)一つ、
撃つてうちぬけ体(たい)あたり。
(三三一頁)
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だから、爆弾や魚雷を撃った後に体あたりしても意味ないっての。北原白秋の美意識と語調のためだけに体あたりの語が使われているようです。
この詩集には「自爆」という語が二回、「体あたり」が五回、ほかに文脈から類義語と思われる語として「爆死」「特別攻撃隊」「特殊潜航艇」「さしちがへ戦法」が各一回言及されています。
他の詩人もそうなのかは、いずれ『辻詩集』あたりを読んで比較しないとわかりませんが、北原が自爆攻撃に壮烈美を見出しているのは確実です。