北原白秋
北原の自爆・体あたり詩の紹介も、『大東亜戦争 少国民詩集』に関してはこれで最後です。題は「まかせろ」。 ※ 僕の兄さん、海軍だ。 いいな、少年飛行兵。 ゆくぞ、雷撃、体あたり。 俺にまかせろ、さう笑ふ。 (『白秋全集28 童謡集4』三七四頁) ※ 雷撃…
この「東条さん」(『大東亜戦争 少国民詩集』)という詩もわりと知られているので、第四連を引用するにとどめておきます。 ※ 帝国議事堂、曲(まが)り角(かど) 少年少女に手をあげる。 「お早う、禊(みそぎ)か、よし、行つた。」 お馬で声かけ、とつと…
「誓へこのときこの八日」(『大東亜戦争 少国民詩集』)。「誓ふ」ではなく「誓へ」、つまり命令形です。 ※ けふだ、大詔奉戴日、 ああ、あの時だ、あの八日。 宣戦布告、あの電波、 朝のラジオのあのマーチ。 直立不動、しんとして、 涙ながれた、僕たちは…
松岡洋右と北原白秋の接点が見つかりました。 ※ (一九三三(昭和八)年)、政党解消連盟の会合では、有名な詩人北原白秋が作詞した同連盟の歌をうたった。 (一七二頁) ※ 政党解消連盟の歌、調べてきます。
北原白秋は多くの童謡を書いてもいますが、少年のいのちを大切にする人ではありませんでした。 ※ 空の魂(たましひ)、あの人たち、 少年飛行士健気(けなげ)だな。 雷撃、爆撃、必中弾(ひつちゆうだん)、 ぐわんと捨身の体あたり。 (『白秋全集28 童…
偵察機なんてのは、生還して敵情を報告するまでが任務だと思うし、第一普通は爆弾や魚雷を積んでいないので、体当たりしてもダメージは与えられないとも思いますが。 国民的詩人の考えることは違いました。珊瑚海海戦での偵察機を詠った詩「還らぬ偵察機」の…
たとえば、「九軍神」という詩があります。 ※ ああ、あの特別攻撃隊。 つひにかへらぬあの五隻。 (『北原白秋全集28 童謡集4』三三八頁) ※ この時期にはまだ「神風特攻隊」とは呼称していませんが、自爆を前提とした小型潜水艇の出撃です。なんで五隻な…
小林秀雄の場合と異なり、北原白秋が戦争詩を書いていたという事実はすでに知れ渡っており、ネットでもよくネタにされています。そういう詩人(?)の詩句をつかまえて「戦争を賛美している!けしからん」とやっても学術上の新発見にはならないと思うので、…
『大東亜戦争 少国民詩集』なんて題の本は、読まなくても「戦争ばんざい 日本ばんざい」式のクリシェ(決まり文句)ばかりに決まっているし、すでに他の方が紹介してることもあるわけです(前回の「大東亜地図」にしても、早川タダノリ氏の著作に紹介されて…
一味違う戦争便乗詩。そういう印象を受け、図書館で『北原白秋全集 28 童謡集 4』を借りてきました。 絵文字にルビつき。つまり(文字化けご容赦)、 [●](ひのまる)だ Ω(はうだん)だ ✈(ひかうき)だ といった具合なのです(原文はたて書きなので、…
後の外務大臣、松岡洋右(まつおかようすけ)が外務省に入ったのは一九〇四(明治三七)年、つまり日露戦争開戦の年でした。上掲書はその事情について、 ※ それから、外務省に入ると徴兵猶予の特典があった。日本がロシア帝国に宣戦を布告したのは一九〇四年…
北原白秋の歌詞だけで音楽の良し悪しを判断するのもどうかと思い、聞いてみました。サビの「万歳ヒットラー~」「万歳ナーチースー」が外にもれないよう、音量を絞って。 萬歳ヒットラー・ユーゲント - 国立国会図書館デジタルコレクション (ndl.go.jp) 芸も…
「幻冬舎新書 日本の軍歌」というサイト ハワイ大海戦 (sakura.ne.jp) で全文読めますので、今回はコピペはしません。『読売新聞』一九四二年一月一日版と『大東亜戦争少国民歌集』(一九四三)版のいずれも、 「我あり、望む大東亜」 (後者では「我あり、…
戦争に甘美さを感じる人がいるなどと、まじめな平和主義者には信じがたいことかも知れません。明治大正や昭和初期の文献を読みなれた者には自明のことなのですが。 一例として、北原白秋が日本の国際連盟脱退(一九三三)時に詠んだ、「脱退ぶし」の一節を。…
おなじみ、『近代文学研究叢書 50』としか、表紙にも背表紙にも裏表紙にも書いてない本。装丁は困りものですが、最近は検索ですぐ中の文学者名がわかります。便利になったものです。 で、北原白秋が収録されている50巻ですが、日露戦争期(一九〇五)に…
途中で寝たりとばしたりもしたので、全編とは断言できませんが、とにかく一通りは『北原白秋全集31』を読み終えました。そしてそこには、心動かされる詩は一編もありませんでした。失笑をさそう詩はあっても。
酷熱も極寒も、人間にとっては耐え難い状況です。そのために人類は、酷熱を涼しく、極寒を暖かくする、エアコンその他の機具を発明したわけです。 精神的な面を見ると、ぎちぎちの連帯を強制される圧迫感と、誰とも連帯できない孤独感が、耐え難い状況の両極…
私は学校や会社の空気がどうにも苦手な社会不適応者で(軍隊は論外です)、一時期はフーコーのディシプリン論なんかに凝ったりもしたのですが。 学校や会社は、社会にとって必要な組織です。そしてそれらの組織を維持するためには、ある程度上から圧力をかけ…
校歌、社歌、軍歌なら、それこそ北原白秋全集にいくらでもあるのに。 「われ」を詠う詩と、「われら」に歌わせる歌の違い、なのだと思います。 もっと言うと、孤独から生まれる文学と、連帯を強要する文学の違い。 北原白秋だって、切支丹でうすの魔法に思い…
定価は5000円 図書館で借りた 厚さはどんと 5.5cm 重いぞ重さ 1.3キロ 北原 北原 白秋~全集~♪ ちょっと文体模写してみました。北原白秋の歌詞というのは実に単調で、簡単に模倣量産できるAIがつくれそうです。 特に終わりの「〇× 〇× われらの…
作詩と作詞の区別とも言い替えられそうですが、歌詞にも自らの真情をつづった歌詞はあるし、メロディのない詩にも他者に詠わせるための詩はあるし。で今回は、「歌うための詩」と、「歌わせるための詩」という区分を設けたいと思います。 たとえば北原白秋の…
「あああ ぼくらの母校 〇×小学校~」とかいうやつ。あれが昔から苦手で。 作詞したやつは現役〇×小学校生でないのはもちろんのこと、卒業生でさえなかったりするあれです。たいてい外部の人間が作ってます。君が代だって外国人が作曲に関与してます。 ああ…
戦前に万歳ナチスを叫んでいたのは小林秀雄だけじゃない、北原白秋だって「万歳ヒットラー・ユーゲント」なんて作詞してるじゃないか、というご意見もあるかもしれません。今回は白秋の詩について。 白秋には「大陸軍の歌」もありまして。その一節を。おそら…