戦前に万歳ナチスを叫んでいたのは小林秀雄だけじゃない、北原白秋だって「万歳ヒットラー・ユーゲント」なんて作詞してるじゃないか、というご意見もあるかもしれません。今回は白秋の詩について。
白秋には「大陸軍の歌」もありまして。その一節を。おそらく最晩年。
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青雲の上に古く 仰げ 皇祖
建国の理想こゝに 万世
堂々の歩武を進む 精鋭我等
我等奮へり
(以下略)
(高須芳次郎『愛国詩文二千六百年』 (非凡閣, 1942)デジタルコレクションより)
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……「精鋭我等」「我等奮へり」って、いつ北原白秋は陸軍の精鋭になったんでしょうか。
やぼを言うな、こんなのは校歌や社歌と一緒で、自分以外の「我等」に歌わせるために量産した詩に決まってるじゃないか。しかし。
自分を一切含まない「我等」とはいったい何でしょうか。言い方を変えると、自分自身を一切棚上げにしてすらすらと嘘を書けるほど、白秋の生涯にとって詩とは軽いものだったのでしょうか。