核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

森鴎外「藤棚」にみる、同調圧力発生装置

 ふと鴎外(鷗外。文字化けしたらすみません)の、「藤棚」という短編を思い出しました。「かのやうに」から始まる、秀麿四部作の三本目。

 今回はサイト

 森鴎外 - 藤棚 (salterrae.net)

 を参照。苦情があるようでしたら全集を読み直します。

 

 子爵の子秀麿が、西洋音楽会に出かけます。途中で「世間」とか「雷同」について考えます。藤棚のある豪邸での音楽会では、「貴い方々」(皇族?)が到着することで、上流階級ぞろいと思われる客たちが粛然となる様を見、色がわりの紙を重ねて文鎮で押さえているように感じます。進行曲や激越な曲を聴きながら、秀麿は秩序の重みについて思いを馳せます。

 

 まとまりのないスケッチ風の小品ではありますが、鴎外なりの秩序・自由観は示されています。皇族(と断言はされていないのですが、侯爵や子爵より上はそれしかないでしょ)の重みで、自由や自然に走りたがる人々は押さえられているのではないかと、そしてそれは(秀麿にとっては)好ましいことであると。「秩序を 無用の抑圧だとして、 無制限の自由で人生の諧調が 成り立つと思つてゐる人達は、人間の欲望の力を侮つてゐるのではあるまいか」。

 私は秩序を無用の抑圧とは思いませんが、「貴い方々」の重みで成り立つ秩序が果たして好ましいものかどうか。