太平洋戦争末期、「こうなったら、皇居にパラシュートで降りて、直接、天皇に無条件降伏を訴えよう」と提案した在米日本人、坂井米夫。
その彼が作成した文書「裕仁さん」の一節を孫引きします。いずれ国会図書館で最優先で調査し、原資料とその頁数を追記します。
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裕仁さん
裕仁さん、私はアメリカ生れの第二世でもなければ、朝鮮人や中国人でもない、日本人です。日本に生れて、日本で育つた日本人です。驚かれたでしょうが、どうか最後まできいて下さい。今は日本にとつても、世界の人類にとつても、実に大事なときです。
私はあなたに一番同情している者です。あなたを含めた全同胞の運命を、一番心配している者です。
あなたの決心一つで、この戦争は明日にも止むのです。
全日本の同胞と、世界人類のために、この無謀ないくさを、止めてもらいたいのです。
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……パラシュート作戦は中止され、八月六日以前に作成されたというこの文書が宛名人に届くことはありませんでした。
在日日本文学はなぜ、自らの手で「これ」をやれなかったのでしょうか。