この資料は私が発見したわけではなく、坪井秀人先生の『二十世紀日本語詩を思い出す』(思潮社 二〇二〇)の三四五~三五七頁より学ばせていただいたことをお断りしておきます。
在米日本人、坂井米夫が戦後まもなくに刊行した半自伝的小説。太平洋戦争下に、「日本にこの無謀な戦争を止めさせなければならない」(『ヴァガボンド・襄』三四〇頁)と決意し、天皇への直接勧告案を米国政府に訴えた人物です。坂井(文中では「襄」)自ら皇居にパラシュートで降下して密書を手渡すという案は実現せず、現実の戦争は二発の原爆投下によって終わることとなりました。
とはいえ、兵器ではなく言葉によって戦争を止めようとした実例の、最大のものといえるでしょう。いつか私が単著『どのように戦争を止めるか』を刊行することがあったら、是非掉尾を飾りたい書物です。
国会図書館のデジタル(館内限定)でも読めるのですが、このたび地元近くの図書館の書庫にもあったことが判明しました。熟読します。