前に引用した「感興録」(9月号収録分)と同じマイクロリールに収録されていたのに、前回の調査では見落としていました。この12月号収録分が弦斎平和論の決定版であり、おそらくは弦斎の書いたもっとも格調の高い文章です。当ブログ1000回記念として、長めに引用します。
※
万物の霊長と云はれる人間が互に同士討して殺し合ふといふ事は何といふ浅ましい時代でせう。それで文化だとか開明だとか誇つてゐる人の気が知れません。
斯(こ)んな浅ましい時代は早く通過して、真の平和時代に移り度(た)いものです。
(村井弦斎「感興録」(『婦人世界』1920年12月号 72ページ)
※
ここまでは前回と同趣旨ですが、今回はさらにその「先」にも目を向けています。
「今次の欧州戦争の如き世界的の大戦争が今後幾回も繰返されたら」あるいは「婦人の勢力が世界を支配するやうになれば」。いつか人類はやがて過去の惨劇を悔い、本当に人間を不幸にする敵との戦いに力を注げるだろうと。
弦斎の言う人類の本当の敵とは、病気と気候です。
※
人種の為めに永久の幸福を享(う)くべき道を考へたら、今日の人類なるものは互に同士討して殺し合ふやうな愚を止めて、各人種互に協心同力(けふしんどうりよく)し、先ず病気といふ敵を征服し、次に気候といふ大敵にも打勝つべき準備を為なければなりますまい。是れが人類の為めの最大幸福です。
(76ページ)
※
・・・まだ『婦人世界』収録の弦斎随筆すべてを読みつくしたわけでもないので、もしかしたらさらに「先」があるかもしれません。