核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

『千一夜物語』(『世界文学大系 73』 佐藤正彰訳 筑摩書房 1964) その2

 シャハリヤール王はいかにしてミソジニーを克服したか。この世界文学大系版は全訳ではないのですが、目につく限り引用してみます。

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 王はこの言葉(引用者注 物語を始める宣言)を聞くと、また一方では不眠に悩んでいたおりから、シャハラザードの話を聞くのをきらわなかった。
 そしてシャハラザードは、この第一夜に、次の話をはじめた。
 (序章 12ページ)

 王は心の中で思った、「アッラーにかけて、この話のつづきを聞いてしまうまでは、この女を殺すまい。」
 (第一夜 15ページ)

 (鳥や獣が話すという物語を聞いて)王は叫んだ、「まことに、おおシャハラザードよ、いまだ余の知らぬそれらのことどもを、そちが語り終えぬうちは、余はそちの運命に関して、いまだ何ごとも決定したくない。それというのも、今まで余の聞いたところは、人語のみであったが、大部分のアーダムの子らによって解されぬ生き物どもの、考うるところを知るのも、また一興であろう」
 (第百四十五夜 258ページ)

 王はにわかに心悲しくなって、彼女に言った、「おおシャハラザードよ、まことに、この羊飼い(引用者注 女性の誘惑を断った隠者)の手本は、余に反省せしむるものがある。余としても、洞穴に引きこもって、永久にわが領地の煩いよりのがれ、子羊をひいて草を食ますることをもって、唯一の業とするほうが、あるいはまさるやもしれぬ。」
 (第百四十六夜 268ページ)

 シャハラザードはつづけた、「この物語が『気の毒な不義の子のややこしい物語』と比べまして、遠くも近くも、同じように驚くべきものであり、同じように道徳上の効用に満ちたものなどとは、けっしてお考えくださいますな。」
 すると、シャハリヤール王は、眉をひそめて、尋ねた、「どこの不義の子の話をしようというのか、シャハラザードよ。」
 (第八百二十六夜 405ページ)
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 核心に入ってきました。―ここまで書いたとき、アンタルは文字数制限にひっかかりつつあるのを見て、つつましく次回に持ち越すのであった。