核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

村井弦斎「婦人の脳力には男子に異れる長所あり」(『婦人世界』1921年11月号) その2

 まだ正確な時期は特定できていませんが、大正期の村井弦斎が大きな心境の変化を体験したのは確かです。
 以前にも紹介した、大正10年の「婦人の脳力には男子に異れる長所あり」より。信長・秀吉・家康に擬されている、ホトトギスの句を引いて、

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 私の若い時分には三人の中で最も秀吉の句を愛唱しました。即ち
  啼かずんば啼かして見せう杜鵑(ほととぎす)
 の一句です。(略)我が智略を以て啼かして見せうと云ふ秀吉の意気込がよく英雄豪傑の気象を顕はしてゐると思つて、此句を絶愛したのみならず、常にその意気込を忘れないで、随分奮闘主義や努力主義の生活も続けて来ました。
 しかるに段段と世中の事を経験し、幾多の失敗を累ねた末、(略)秀吉流の句を愛し、その主義を行はうとしたのは、全く若気の誤りであつて、人生の事は家康流に「啼かずんば啼くまで待たう」でなければならない事を痛切に感じました。
   ※

 ・・・そして「今次大戦の如き失敗」の批判へとつながっていくわけです。

 
 2015・8・18追記 村井弦斎「婦人の脳力には男子に異れる長所あり」の掲載号は、『婦人世界』1921年(1922年ではなく)11月号でした。訂正してお詫びします。