核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

磯野フネの顔を持つヒットラー

 別に、長谷川町子先生が戦時下にヒットラーを礼賛していた、という話ではないのでご安心ください。むしろ、その逆の証拠です。
 『長谷川町子全集三二巻 サザエさんうちあけ話 サザエさん旅あるき』(朝日新聞社 1998)より。
 「サザエさんうちあけ話」の、ビルマに出征した姉の夫を扱った章(21ページ)。「ヒットラー(母のアダナ)」とあるところに、長谷川絵でかわいく描かれたヒットラーと、フネさん似の長谷川母が書き込まれています。正確には、小さなマンガの横にふりがなの様に文章がある感じです。
 終戦後はアダ名がワンマンに改名した(68ページ)とのことですので、尊敬の意味をこめたあだ名でないことは確かです。
 ただ、彼女は家族の反対を押し切って『サザエさん』の単行本出版を決行しており、今日のサザエさんを築いた功労者ではあります。
 1巻が売れず、三姉妹に非難された長谷川母の反応。
 
   ※
 「型が、わるかったんだもの、サイズをかえて巻を出すのよ」
 「2巻!!!」
 「お金は???」
 「かりればいい」
 (49ページ)
    
 
 この 「2巻!!!」と叫ぶ三姉妹の表情と、フネさんのように平然とお茶を飲むお母さんのギャップが実に笑えます。こうした爆発力は原作絵ならではです。