「一 真理を探究するためには、一生に一度は、あらゆる事柄について、可能な限り疑わなければならない。」
こんな感じで、デカルト哲学の基本が箇条書きで、実に読みやすく書かれています。『方法序説』や『省察』でデカルトに挫折したという方は、こちらを先に読むことをおすすめします。なお今回、著作集2巻の『省察』を飛ばして『哲学原理』に入ったのは、うっかり2巻だけ先に返却したからであって、挫折したわけではありません。
読みやすいのは確かですが、納得できるかは別です。その際たるものが一四番、神の存在論的証明。
「一四 神に関するわれわれの概念のうちには、必然的な存在ということが含まれていることから、神が存在するということが正当に結論される。」
(40ページ)
『哲学原理』がはじめてではなく、デカルトはあっちこっちで同じようなことを書いてます。「神の観念には『存在』が含まれる。ゆえに神は存在する。」と。
といったつっこみを書くつもりだったのですが、『デカルト著作集 Ⅳ』に、「ビュルマンとの対話」と題されたFAQみたいなのがありまして。そこでビュルマンという人が私などよりはるかに鋭いつっこみをデカルトに浴びせています。詳細はそちらで。
できたら上記のような理屈ではなく、もっと生の言葉で神の存在を語ってほしかったものです。デカルトという人は若くして宗教戦争の志願兵となった人で、晩年の『平和の訪れ』に書いたような、財産一切を奪われた飢民や、重度の障害を負った兵士をたくさん見ているはずです。そこに神はいたのかどうか。