オタどんさまも関心を持たれたようなので、もう一本だけ土田杏村を読んでみることにします。言及されている河上肇その他と読み比べたわけではないので、ひとまず雑感とさせていただきます。引用は例によって、『近代日本思想大系 35 昭和思想集Ⅰ』(筑摩書房 1974)より。
一言で言うと、「河上氏はマルクス・レーニン主義を理解していない」という方向の批判です。
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これ(引用者注 河上肇の哲学的立場)はマルクス、レニンが主張した唯物論的認識論であるか。河上氏の出発点は現象そのものではなくて、現象の表象だ。「直接に生ずる表象そのもの」といふと、マッハ主義の「直接経験」「経験の直接与件」といふと、其間に何の相違があるか。河上氏は依然として、レニンの排撃した経験批判論の立場より離れていない。
(283ページ)
(285ページ)
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ただ、この文章から確実に言えることは、土田杏村が「私はマルクスを自らの思想の偉大なる先覚と考へてゐる」(282ページ)こと、彼の河上批判はマルクス・レーニン主義を真理とした上で、河上がそれを理解していないとする方向での批判だということです。