核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

河合栄治郎「マルクスより出でてマルクスを克服するもの」(『中央公論』1929(昭和4)年1月)

 『近代日本思想大系 35 昭和思想集Ⅰ』(筑摩書房 1974)より。
 誤解を招きそうな題名ですけど、マルクスを擁護する内容ではありません。「筆者はマルクス主義者ではない。過去に於て之に反対し、今後も亦之に反対を継続するであろう」というのが河合栄治郎の立場です。
 ただし、唯物論マルクス主義)にとってかわりつつある国家主義についても、河合は容赦のない批判をしています。
 
   ※
 私は日本従来の国家主義こそが、寧ろ唯物論の為に路を準備した同工異曲のものであると云いたい。(略)外なる命令に動いた国民は、自律を持たざる点に於て、唯物論の必然論には寧ろ親しみ易いのである。
 (185ページ)
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 ・・・つまりマルクス主義とは、「カイザーとザー(引用者注 それぞれドイツとロシアの皇帝の称号)との専制が、そのまゝに新形式の専制に移動するだけである」と。
 以上の理由から河合は反動主義とマルクス主義の両方を否定し、議会政治と自由主義に活路を求めます。もっと広く読まれるべきでした。