そもそも土田杏村全集からして、いなかの図書館には置いてないのです。
かろうじて、流動出版『《復録版》昭和大雑誌・戦前篇』(1978(昭和53)年)という本に上記の時事論文が採録されていまして、ひとまずここから入ることにします。
日本の(昭和7年現在での)将来を考える上で、土田は「世界の最大強国と国運を賭しての戦争を開始しないで行くことが出来る」かどうかを、存立の条件に挙げています。後半ではより具体的に「日米戦争の危機」とも言っています。
では、「戦争は避け得られるか」。土田の提案は「日本は満洲国と相結んで一つのブロツクをつくり」「一国家が自給自足的になつたとすれば」、他の国家と戦争を交へることは必要でなくなる、というものです。
そして「自足自給の国家政策を立てる為め」には、生産を事業家の任意にゆだねるのではなく、すべて国家が決定する「国民的統制経済」でなければならない、とも書いています。それはマルキシズムとも、「単なる日本主義やフアシズムや」とも違うものだとも。
さほど軍国主義的ではなく、むしろ「当時としては穏当」だったのではないかとさえ思われます。しかし、決して賛同はできません。