核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

渡辺研二『ジャイナ教 非所有・非暴力・非殺生―その教義と実生活』(論創社 2005)

 私は無神論者の宗教嫌いですが、このジャイナ教には常々関心を抱いています。
 仏教の開祖釈迦(紀元前463~同383)とほぼ同時代(紀元前444~同372)同階級・同地方のインドに生きた、マハーヴィーラ(本名ヴァルダマーナ)を教祖とする宗教です。
 マハーヴィーラという尊称は「大勇」という意味。勇者(ヴィーラ)という語は当時の「世間の人々は、武勇に任せて人を殺傷する力の強い者のことだと考えている。しかしそれは誤っている。生きものを傷つけない人。―それが最上の勇者である、とジャイナ教ではいう」(229ページ)そうです。
 渡辺著の副題にもある通り、その特徴は仏教よりもさらに徹底した非殺生主義にあります。

   ※
 ジャイナ教では修行者は生物間の敵意を取り去り、他の生きものを傷つけないように心がけねばならぬと主張されている。つまり動物を食うために殺してはならないというのである。ありとあらゆるものの中に霊魂の存在を認め、霊魂は自分と同質のものであるからこれを傷つけたり、殺したりしてはならない、というのである。
 (224ページ)
   ※

 虫や微生物を殺すことも禁止で、植物を食べることも制限。在家信者であっても、水は雨水のみ、肉食は禁止、米飯や野菜よりなるカレーも制限つき。たぶんマーボーカレーも禁止。
 アジア各地の信仰と習合して広がった仏教とは対照的に、ジャイナ教はインド国内にとどまり(海を渡るのも制限ありなんだとか)信者数320万人にとどまっているそうです。むしろ、こういう思想の信奉者が100万人単位で存在することのほうが、私には驚きでした。