核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

不戦不和(吉川英治『三国志』より)

 吉川英治の『三国志』は、『三国志演義』の忠実な翻訳というよりも、第二次戦争下に書かれた国文学という色彩が強く、そういう方向での研究もなされているようです。

 玄徳(劉備)が本格的に曹操と対峙することになった『臣道の巻』に出て来る「不戦不和」という語も、おそらくは『演義』や正史には出てこないと思います(未確認)。

 以下、青空文庫より引用。

 

    ※

 関羽は、雑談的に、
「やはり家兄のお心はそこにありましたか。実は、王忠と出会った時、よほど一げきのもとに斬って捨てんかと思ったなれど、いやいや或いはこのかみのご本心は、曹操と和せず戦わず――不戦不和――といったような微妙な方針を抱いておられるのではないかとふと考えつき、わざと手捕りにして持ち帰りましたが」と語って、自分の推測があたっていたか否かを、率直にたずねた。
 すると、玄徳は、会心の笑みをもらして、
「さなり、さなり! 不戦不和とは、よくわが意中の計を観た。

    ※

 

 ……時局との関わりもありそうですが、それは発表媒体とその時期を調べた上で。

 不戦不和という微妙な方針。なんか論文に使えそうです。