核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

野口武彦『幕府歩兵隊 幕末を駆けぬけた兵士集団』(中公新書 二〇〇二)

 幕末初期に幕府や諸藩が西洋から輸入したのは、前装滑こう(月に空)式のゲベール銃でした。やがて前装施条式のミニエー銃にとってかわられ、さらにフランスが幕府にシャスポー銃を大量に供与し……。

 といった話が好きな私にはたまらない本です。兵器の話だけでなく、幕府歩兵隊を構成した知られざる人々(土方歳三だけは有名ですが)にもふれられています。竹中丹後守重固(しげかた)という、竹中半兵衛重治(しげはる。秀吉に仕えた名軍師)の子孫っぽい人が指揮官として出てきます。鳥羽伏見をはじめとする実戦ではあまり活躍していませんが、先祖の名を買われたのでしょうか。

 野口氏の説では、幕府歩兵隊は大鳥圭介ら指揮官の指導力よりも、むしろ兵士どうしの横の結束力によって、幕府瓦解から五稜郭までの戦いを継続したようです。すべての戦争は「戦わせ」であるというのが私の持論でしたが、例外もあるのかも知れません。国民国家形成以前の時代には。