『愛々草紙』で論文は書けない、という結論に達しました。
光るところはあるんですよ。道中で盗賊甲と乙に襲われ、仕込み杖で返り討ちにした後、
「彼輩も自業自得とハ申しながら誠に不愍で御坐りますなア」(三九九頁)
と述懐するところなど、単なる勧善懲悪の戯作で終わっていません。小野梓は十七歳の時、官軍方として戊辰戦争に出征しています。多分、心ならずも人を殺めたこともあったのでしょう。そうした実感がもっと作中に、にじみ出ていたらよかったのですが。
『愛々草紙』で論文は書けない、という結論に達しました。
光るところはあるんですよ。道中で盗賊甲と乙に襲われ、仕込み杖で返り討ちにした後、
「彼輩も自業自得とハ申しながら誠に不愍で御坐りますなア」(三九九頁)
と述懐するところなど、単なる勧善懲悪の戯作で終わっていません。小野梓は十七歳の時、官軍方として戊辰戦争に出征しています。多分、心ならずも人を殺めたこともあったのでしょう。そうした実感がもっと作中に、にじみ出ていたらよかったのですが。