核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

西川長夫と国民国家批判についての懐疑と、再読計画

 国民国家批判、というのは私が研究生や大学院生をしていた2000年代にはやった理論です。今でも流行っているかも知れません。

 私は当時から、国民国家批判論には懐疑的でした。戦争も差別も郵便ポストが赤いのも、国民国家が悪い、という結論にすれば一応の論文にはなる時代だったわけですが、それは果たして生産的なのか。

 国民国家以前の江戸幕府専制国家や宗教国家に戻るのがいいわけはないし、国民国家より後にできた共産主義国家が惨憺たるありさまなのは見ての通りだし。国民国家という枠組みすら持てない地域が民族紛争や宗教間紛争に見舞われているのも、二十一世紀にはしばしば目にするところだし。どう考えても、国民国家でないイスラム国よりは、国民国家日本のほうがましなのです。今のところは。

 要は代案を欠いていること、国民国家に代わるヴィジョンをなんら提示できていないことが、私は不満だったわけです。国民国家よりもましなヴィジョンがない以上、国民国家を単位とした世界平和を考えるほうが生産的なのではないかと。

 というわけで国民国家批判論とは距離を置いてきたわけですが、このたび同論の提唱者というべき西川長夫の本が図書館にあると知り、三冊ほど借りてきました。今さら国民国家批判論に転じるつもりもありませんが、原点を知る必要はあると思ったわけです。

野口武彦『幕府歩兵隊 幕末を駆けぬけた兵士集団』(中公新書 二〇〇二)

 幕末初期に幕府や諸藩が西洋から輸入したのは、前装滑こう(月に空)式のゲベール銃でした。やがて前装施条式のミニエー銃にとってかわられ、さらにフランスが幕府にシャスポー銃を大量に供与し……。

 といった話が好きな私にはたまらない本です。兵器の話だけでなく、幕府歩兵隊を構成した知られざる人々(土方歳三だけは有名ですが)にもふれられています。竹中丹後守重固(しげかた)という、竹中半兵衛重治(しげはる。秀吉に仕えた名軍師)の子孫っぽい人が指揮官として出てきます。鳥羽伏見をはじめとする実戦ではあまり活躍していませんが、先祖の名を買われたのでしょうか。

 野口氏の説では、幕府歩兵隊は大鳥圭介ら指揮官の指導力よりも、むしろ兵士どうしの横の結束力によって、幕府瓦解から五稜郭までの戦いを継続したようです。すべての戦争は「戦わせ」であるというのが私の持論でしたが、例外もあるのかも知れません。国民国家形成以前の時代には。

 

『第三帝国』という雑誌があった

 前からちらちらと誌名を目にしていたのですが、どういう雑誌かは知りませんでした。もちろん現物も見ていないので、ウィキペディア「石田友治」の項より。「第三帝国」という項はありませんでした。

 

    ※

 この年、石田より10歳余り年長で『万朝報』記者であった茅原華山に新雑誌創刊の話をもちかけ、これに応じた華山とともに1913年10月10日、『第三帝国』を創刊した。「第三帝国」とは、イプセンの史劇に由来し、「霊肉一致」をもたらす新文明を表していた[注釈 1]。当初この雑誌は、「小日本主義[注釈 2] を唱えて植民地放棄を訴え、また、普通選挙請願運動の呼びかけ[注釈 3] など当時においてはもっとも尖鋭な「民本主義[注釈 4]的な立場を展開した。

    ※

 

 1913年なので、ドイツ第三帝国とはまったく無関係でした。植民地放棄に普通選挙と、先進的な雑誌のようです。

 こうなると創刊号だけでも読みたくなります。平和主義関係もあるかどうか。

 第一帝国と第二帝国は何なんでしょうか。と思ったら、注に書いてありました。

 

   ※

 ^ 明治維新以前の"覇者"による「第一帝国」、維新後の藩閥・官僚による「第二帝国」を超克し、立憲政体による君民同治の「第三帝国」を築くべきである、という願いが込められていた。

   ※

御真影はスキャンだった?

 御真影関係の考察を含む論文を投稿した後で、気になる論文が見つかりました。

 

   ※

 スマホの写真論(第22回)御真影は「スキャン」だった

大山 顕

 

ゲンロン = Genron 10.5, 116-121, 2019-10

   ※

 

 私の論文は「御真影はスキャンではなかった。むしろ絵だった」という趣旨ですが、大山論も取り寄せる必要があるかもです。

 

そうだ京都行こう

 もちろん旅行ではなく、『GMウォーロック』誌に載ってた京都異世界ツアーをやってみようかと思います。メンツが四人そろうかどうかが問題ですが。

 幕末クトゥルフキャンペーンのほうは、坂本龍馬の脱藩に巻き込まれた探索者一行が、四国山地の最奥部で「砂に棲むもの」と遭遇。

 「乙女姉さんの昔話は本当じゃっただか!」

 と怪しい土佐弁で驚いた所で止まってます。そっちの一行も京都へ向かう予定ですが、構想がちょっとふくらまなくて。