核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

アンジェイ・チェホフスキ「絶対兵器」

 草柳種雄訳。早川書房『世界のSF(短編集) ソ連・東欧篇』(1971)収録。
 原子爆弾や大陸間弾道ロケットは、戦争を実現するよりもむしろ「予防」するものであり、それらの開発者は仮面をつけた平和主義者ではないかという議論の後に。
 絶対兵器の実用化に成功したと称するブフバフ大佐が取り出したのは、一羽のめんどりでした。この遺伝子操作しためんどりがまず装甲化されたたまごを産み、そのたまごから自律型めんどり戦車がかえり、その2時間半後にはまた次世代戦車のたまごを産み…といった具合に、学習し進化していく生体兵器です。
 しかし翌日、第五世代から戦車のかわりに農業用トラクターが産まれます。進化は軍人たちの望む方向に向かわなかったのです。意志をもったトラクターたちがサボタージュをはじめ、会議室は大混乱に…。
 結末は明確ではないのですが、冒頭の議論から察するに、戦争の実現ではなく予防こそが兵器の本質であって、自我をもった兵器たちはその使命を果たすことを選択したのでしょう。戈を止めると書いて武と読む。
 なお作者チェホフスキについては、「モスクワ大学出身の若い生物物理学者」とあるきりで、刊行年は不明。冷戦下のソ連でこんな問題作を発表して大丈夫だったのか気になります。

 

 2021・12・23追記 これ、『コブラ』の最終兵器の元ネタなのでは。あれも最初はタマゴだし。まああのエピソードは傑作だと思いますが。