核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

三島由紀夫『近代能楽集』より「邯鄲」

 乳母の菊と坊ちゃまの次郎が、十年ぶりに再会します。

 十八歳にして人生に倦怠を感じた次郎に、菊はふしぎな枕を勧めます。

 夢の中で次郎は美女に誘惑され、社長になり、元首になりといいことずくめの人生を送るのですが、まったく満足した様子はなく、ついに枕の精霊に説教されます。

 「あんたは何だ。はじめからあんたは生きようとしないじゃないか。あんたは素直さを欠いておる。あんたは夢のなかででも、人生に全部肘鉄をくらわした」

 精霊に毒薬を飲まされそうになって、次郎は初めて「それでも僕は生きたいんだ!」と叫びます。

 目覚めた次郎は、菊と共に思い出の部屋で生き続けることにします。庭には花が咲いているのでした……。

 

 なんか能楽というよりはニーチェっぽい感じです。快楽のためではなく、生きること自体に意味がある。ひきこもりを美化するような結末は批判もあるかも知れませんが、私は心地よく受け取りました。