核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

田河水泡『凸凹黒兵衛』(『婦人倶楽部』1938(昭和13)年12月号)

 正確な表記は
 
    ワグンマキヅツ
  衛兵黒凹凸
 
 となります。「衛兵黒凹凸」には一文字ずつ縦に「ヱ」「ベ」「クロ」とフリガナあり。
 (2013・5・21追記 「ボコ」と「デコ」にもふりがなあり。また最後のコマの「和平」は、右から「平和」と読むのが正しいようです)
 以下ネタバレにつき白字で。
 
 兎の山が狸と戦争になり、黒兵衛も軍医として従軍します。
 黒兵衛の親切ぶりを聞きつけ、敵軍までが負傷した狸の大将を連れてきます。
 いつもの笑顔で大将を迎え、おいもをごちそうする黒兵衛。
 しかし、元気になった狸の大将は、「兎ナンカニ マケルモノカ」と最後の抵抗を試みます。しかし黒兵衛は逆に組み伏せ、
 黒「モウ争ハヤメテオ互ヒニ仲ヨクシタ方がイイゾ」
 狸「ナルホド考ヘテミレバ先祖ノカチ(踊り字)山ノ頃カラ狸ノ方ガ悪カツタ」 
 黒「ホントハ同ジ山ニスム仲ヨシノ友達ナノニ」
 こうして兎と狸の戦争は終わり、「和平」と書かれたおみこしの上から
黒兵衛からのごあいさつ。
 「僕ハコレカラマス(踊り字)腕ヲミガイテ リツパナオ医者ニナリマス
 オナジミフカイ ミナサン 僕ノ話ハコレデオシマヒデス ゴキゲンヨウ サヨナラ」
 ヲハリ。
 
 ・・・田河水泡は前年には、日中戦争を題材とした『のらくろ総攻撃』を描いており、必ずしも反戦派というわけではありません。ただ、この回の凸凹黒兵衛に関する限りは、私に何かを考えさせる作品でした。
 戦時下に兵士の命を救う行為が無条件に善と呼べるのかという問題は、村井弦斎の『匿名投書』を読んだ時から今日に至るまで、いまだに私の中では決着のついていない問題なのです。