『三十年後』の同時代評がまた一つ出てきました。
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一言にて尽せば近来の快著である、奇想天外一読三嘆を禁ずる能はざる面白い本である。文も歯切りがよく、構想も月並文士の思ひもよらぬところがあり、流行の科学(サイエンス)が加味されてゐるところに一層の感興と自然(じぜん)とがある。恰度(ちょうど)ヴエルーヌの科学小説や、ベラミーの「ルツキング・バツクワード」を日本的に創造した感がある。これに抜目なく、星製薬株式会社の広告を巧みに按排したところなどは、著者星君の巨腕を眼の前に見るやうで、同君の万歳を叔したくなる位ゐである。
(以下略 95ページ)
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『東京朝日新聞』ではあらすじ数行しか紹介されず、文学雑誌では書評を見たことがない『三十年後』ですが、経済誌では評価されていたようです。どちらかというと「奇妙なる広告法の研究」として。