核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

星一『官吏学 第四巻』における優種学

 現代ではまとめて「優生学」と訳されているEugenics。
 星一はその創始者ゴルトンやダーベンポートにさかのぼり、出生前の配偶者選抜を重視する優種学(Eugenics)と、出生後の環境を重視する優境学(Euthenics)を区別した上で。
 そのどちらをもってしても、「各自の心身の能率を平等ならしむる能はず」と断じています(近代デジタルライブラリー 10/362)。
 努力と克己の人、星一にしてみれば、生まれも育ちも、本人のやる気の前では小さな要素だということなのでしょう。『三十年後』の結末とも照応しています。
 遺伝や環境がある程度人生を決定することを否定してはいませんが、次の章では祖先以外に何の誇るものもない名門出身者が多いことを遺憾としています。